名古屋大学 未来社会創造機構量子化学イノベーション研究所

当研究所の設立趣旨

現在,我が国の国家戦略のひとつとして,国の総力を上げた量子技術の社会経済システムへの利活用が進められており,2020年1月には「量子技術イノベーション」を明確に位置づけ,日本の強みを活かし,重点的な研究開発や産業化・事業化を促進し,量子技術分野で世界のトップを目指すため,「内閣府・量子技術イノベーション戦略」が策定されました。また,統合イノベーション戦略推進会議において「量子未来社会ビジョン」(2022年4月22日)及び「量子未来産業創出戦略」(2023年4月14日)が策定されました。

これらの戦略的なビジョンのもと,国内に10ヵ所の量子技術イノベーション拠点が設置されておりますが,既存の拠点では重要学術の1つである「化学」の観点が欠如していたことから,新たな11番目の国内の量子技術イノベーション拠点として,東海国立大学機構に,原子・分子レベルで量子状態を制御して医療および産業への利活用を促進する拠点「量子化学産業創出拠点」が内閣府から認定されました。

この「量子化学産業創出拠点」における学内の基盤研究所として,未来社会創造機構に名古屋大学の強みを活かした「量子化学イノベーション研究所」を新たに設置しました。本学には,関連する既存組織として,未来社会創造機構「ナノライフシステム研究所」内の1部門「量子科学技術・量子生命科学研究部門」が存在し,今回の拠点認定の基となる量子科学研究を推進してきました。内閣府からの拠点認定を受けて,これまで推進してきた化学を基盤とした量子科学研究の発展だけでなく,量子技術の産業創出の観点を大幅に強化する必要があると考えます。そこで,医療および産業への利活用を強く意識した「新技術創出部門」を含む3つの部門(「理論・計測部門」,「量子制御技術部門」,「新技術創出部門」)と3つの部門をシームレスに連携させる運用企画部門として「統括部門」を新設の研究所内に設置します。3つの部門では,各部門で量子研究を推進するのみならず,「統括部門」のマネジメントの下,3つの部門間の連携により,量子材料,量子生命,量子計測,量子コンピューターなど先端量子技術の医療および産業への利活用を推進していきます。また,量子とは無関係に進んでいた研究に関しても,量子理論・量子制御に基づく共同研究により新たな研究の展開を図っていきます。